大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)5965号 判決
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〔判決理由〕ところで、原告は第一次増額請求時の本件土地の賃料は少なくとも一ケ月四、八〇九円(但し、道路敷地部分の請求賃料を控除した。)が相当であると主張するところ、右主張に照応する前掲甲第三号証及び鑑定の結果はいずれも積算式評価法に基づき更地価格から借地権価格を控除した底地価格に適正利潤率年六分を乗じ、これに公課等管理費を加えた純客観的な継続賃料を算定するものであつて、3.3平方米当り前者は一ケ月二六九円、後者は一六五円と鑑定評価していることは明らかである。
しかしながら、右評価法は当該不動産への投下資本の報酬として供給者側の通常期待し得る額を基本とし、増額請求時の地価から適正利潤率でもつて逆算するのであるから、需要と供給の原則よりして需要者たる借地人が他人資本を正常に運営し、右資本利子を支払うに足りる利潤を獲得できることが期待され、正常な自由市場において通常の標準的経済能力を有する需要者が一般的に負担するであろう額と表裏一体をなしているのであり、借地法を貫く借地人保護の法律的要因を少しも考慮していないことは明らかである。
そうだとすれば、既定賃料とその後に生じた経済事情の変動の不均衡を社会保護立法的に調整しようとする借地法第一二条の法意に必ずしも適合するとは云い難い。
しかも、既定賃料約定当時これが純客観的賃料に比し不相当であつたからと云つて、これを理由に借地法第一二条の増額請求ができないのに拘らず、一たび経済的事情の変動が起れば、契約当事者間の主観的特殊事情は無視され、右特殊事情の立証困難な借地人の期待と信頼を裏切ることになるばかりでなく、右評価法は地価の騰貴と賃料の増額を直線的に対応させているから、土地価格の上昇率が一般消費物価に比べ異常に増大している昨今の情況下において、賃貸人が不労所得として元本に比例する利回り報酬を享受できるのに反し、借地人は普段に増大する元本の最有効使用の原則に基づく適切な利用収益を強いられ、これが適切且つ継続的にできない借地人にとつてはその経済的心理的負担に絶えずなやまされ、その生活の安定が著しくおびやかされる結果になりかねないはずである。
従つて、当裁判所は借地法第十二条の増額されるべき相当賃料額は、賃貸当事者間の既定賃料を基準とするスライド方式を基本とし、これに借地人の職業、その経済的能力、借地期間及びその借地利用の方法等の借地人側の事情を勘案しながら、適宜積算式評価法や賃料事例比較法によつて修正することによつて合目的に算定すべきものと考える。(大隅乙郎)